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DTMオーケストラのメイキング~その2. BPMをヌルヌル動かす

こんにちわ。一譲です。
空想系DTMオーケストラ勢と仲良くなりたくて書き始めたこの「DTMオーケストラのメイキング」企画、第2稿の今回はBPMをヌルヌルと動かすアレンジをするときのワークフローについて書きたいと思います。
機械制御のDTMは正確なリズムが刻める反面、杓子定規な演奏になりがちです。
これが有利に働くジャンルの音楽もたくさんありますが、オーケストラに関してはこの「正確さ」が不利に働きがちなジャンルになります。
今回は、この不利をやり過ごすノウハウをご紹介しようと思います。もし何か使えそうなTIPSがあれば、拾っていってください。
作例は、前回に引き続き「望郷の川辺」です。
望郷の川辺(Vocal:ケィニ Illustration:弥花「水幻の都」より)

テンポの揺らし方

とはいっても、原理的には大して難しいことをしているわけではありません。
TEMPO(BPM)のパラメータをオートメーションで動かしているだけです。
MIDIノートは通常通りルーラに沿って置いていけば良く、微妙なテンポの揺らぎやリタルダント、間のとり方などは、全てTEMPOに当てたエンベロープで制御します。

問題点

ところでこのテンポをオートメーションで制御するという方法、MIDIシーケンスに対する制御としては完璧なのですが、オーディオクリップを相手にするとちょっと見づらいことになります。
先程の動画で、オーディオクリップがテンポの上下に合わせて伸縮していたのにお気づきでしょうか。
オーディオフォーマットはサンプリングレートが決まっているので、出音を変えたくなければBPMがどのように変化しようと1秒あたりに出力するサンプル数は同じにしなくてはいけません。BPM=サンプルスキャン速度と考えれば、BPMが上がるのであればそのぶん波形を引き伸ばしてサンプルの間隔を広くする必要がありますし、逆にBPMが下がれば波形を縮めてサンプル間隔を狭くする必要があります。
これをDAWがやってくれないと、BPMの上下に伴ってピッチが揺れてしまいます。
BPMと波形
テンポを揺らすアレンジを行う場合、貼り付けたオーディオクリップはBPMに合わせて常に伸縮する状況になるので、編集作業はちょっと落ち着かないものになります。
下のクリップは、僕が普段のアレンジ作業で見ている画面です。
この段階では、まだシンバルのようなワンショット系のパーカッションを入れることができません。
ワンショット音源のようにテンポエンベロープと同期していない音源は、BPMが上下するとピッチが揺れてしまうからです。
なのでワンショット系のオーディオ素材を使うパート(下図④)は、テンポ同期が必要なパート(下図①)を全て作り終えてからトラック別にパラアウト(下図②)して、テンポを固定してから重ねます。
ボーカルパート(下図③)も同様です。
(2017/06/12 7:30追記)
ボーカルはテンポに同期してますが、mixがしにくいのでテンポ固定後に読み込んでいます。
あと、ワンショット系の音源はなぜピッチが揺れるのか、僕もイマイチよく飲み込めていません。
実際、BPMによってワンショットのピッチが上下することは無いので、もしかすると設定のせいなのかも知れませんが。とりあえず、テンポを下げると実害が出たのでテンポ固定後に読み込むようにしてます。
まぁよしんばピッチを揺らさずにテンポを変動させられるとしても、発音のタイミングを他のパートと合わせるのはテンポ固定後の方がラクなので、今のところ編集の順序としてはこれがベストだと思っています。
PlayList俯瞰図_解説入り
多少条件は悪いものの、この辺りの上手い解決策を僕は知りません。
一応出音には問題がないので、アレンジ作業に関しては波形を伸び縮みさせながらゴリゴリと切り進めていきます。
余談になりますが、ボーカルさんとコラボするときは、先にピアノソロなどでラフアレンジを作るようにしています。このラフアレンジで、「全体の曲の雰囲気」「テンポの揺らし方や間のとり方」の2つを決めて、ボーカルの方にラフオケとメトロノームの音源をお渡ししてしまうのです(メトロノームの音は、普通にVSTiでピッ、ポッ、ポッ的な音を手作りして書き出します)。
こうすることで、ボーカリストはアレンジと並行して歌の検討ができるので、相手の待ち時間や総制作期間を抑えることができます。テンポに当てたエンベロープさえ変えなければ、アレンジをいくら弄ろうがボーカル音源との同期ズレは起こりません。お願いすれば、仮歌を頂くこともできるかも知れません。

音を重ねていく

音を入れていくときは、セクション別・パート別にMIDIシーケンスを作ってVSTiを鳴らし、それをディスクレコーディングしてオーディオクリップを重ねています。ここで言うVSTiとは、KONTAKTやEastWestのように1台で複数のパートを担うオーケストラ音源のことです。単一パートを担うVSTiについては、いちいちオーディオクリップ化したりはしません。
具体的な手順としては、次のようなものです。
1.MIDIシーケンスを書いてVSTiの制御を作り込む。
2.VSTiの音をテンポエンベロープに沿って再生し、録音する。
3.録った音源をロードする。
4.MIDIシーケンストラックをミュートする。
これらの手順をセクション数×パート数ぶん繰り返していきます。
このようにする理由は、KONTAKTやEastWestのような音源をマルチティンバーで使おうとするとマシンスペックが足りなくなるからです。
そのため、プロジェクトの見た目はMIDIシーケンスのトラックとオーディオクリップのトラックが交互に並んだ縞々模様になります。
アレンジ編集画面

編集時のシグナルフロー

・・・何だかTIPSと呼ぶにはあまりにヒネりのないノウハウで恐縮です。
このように力押しなワークフローにあっても、「MIDIシーケンス編集中はオーディオクリップ化した後の音と同じエフェクトチェーンを通して音を聴きたい」という最低限の要求があります。
それを満たすため、僕なりに多少シグナルフローを工夫したりしているので、それを幾つか紹介します。
まずは、KONTAKTやEastWest等VSTiの音を、MIDIシーケンスで制御して録ろうとする場合のフローです。
シグナルフロー図_VSTiレコーディング
録り終わって既にオーディオクリップ化した音は、直接"Track"と書いたmix用のトラックに入ります。入った後は、第1稿で書いた通りマクロリバーブ等の処理がされて、マスターアウトから出てきます。
一方VSTiからの音は、一旦"REC"と書かれたトラックを経由させてから"Track"に流します。これは、VSTiからの音量レベルを減衰させずに、そのままオーディオクリップ化したいからです。
"Track"で録ってしまうと、オーディオクリップの音量が小さくなってしまいます。このトラックにはmix目的でマイナスのゲインがかかっているからです。mixに影響のない"REC"トラックであればゲインは±0で良いので、オーディオクリップの音量は小さくなりません。
・・・という狙いです。
次は、VSTiの代わりに外部機器を制御して音を録ろうとする場合のフローです。
シグナルフロー図_外部機器レコーディング
音源がVSTiか外部機器かの違いはありますが、"REC"トラックを経由して"Track"に音を入力する点は一つ前のフローと同じです。
異なるのは、"REC"の前に"Line L/R"を経由させている点です。なぜ"REC"トラックに直接入れずに"Line L/R"トラックを経由させるのかですが、これは別にどちらでも良いです。僕も、直接"REC"トラックにLineを繋ぐことはよくあります。単に作図の都合ということで。
ただ、VSTiからの音を録るトラックとLineからの音を録るトラックを同じにする場合は、VSTi録音時にLineからの信号をミュートした方が良いです。外部機器が音を発していなくても、Lineには電源などから小さなノイズが入って来ています。その信号をカットしないままVSTiで音を録り重ねると、パートの数だけノイズが重ね録りされてしまいますので。
最後は、電子ピアノの音を録るときのフローです。
シグナルフロー図_電子ピアノレコーディング
電子ピアノも外部機器であることに変わりはないので、フローとしては基本的に一つ前と同じです。ただ異なるのは、"Line L/R"にそれぞれ内向きのPANを当ててから"REC"トラックに流している点です。
このようにPANを当てる理由は、電子ピアノのステレオ感を少し狭めて使いたいからです。
僕が使っているYAMAHA P-120という電子ピアノは、奏者にグランドピアノ感を与えるというコンセプトの製品です。そのため、実際のグランドピアノと似せて左Ch.からは低音寄り、右Ch.からは高音寄りの音が出るように設計されています。
一方、僕の音作りのコンセプトは聴者がグランドピアノからやや離れた位置に居るというのが前提なので、YAMAHA P-120からの音をそのまま使うとステレオ感が強すぎます。しかし、だからと言ってモノラル化してしまうと立体感が損なわれて、これはこれで残念な音になってしまうというジレンマがありました。
これを解決するために考えたのが、録ったあとにステレオエンハンサーを逆向きに使ってステレオ感を弱める方法と、もう1つは録るときにPANを内向きに当てるという方法でした。聴き比べてみたら後者の方が自然な音に聴こえたので、以来このような方法を採用しています。
(2017/6/12 0:40追記)
ところでこのパンの振り方、僕は長年"Line L"をややR気味に傾けて、"Line R"をややL気味に傾けてたんですが、これだと思った音になってないことに気づいてしまいました。"Line L/R"はそれぞれ左いっぱい/右いっぱいに振った状態で電子ピアノからの入力通りの音が出ますので、シグナルフロー図のように"Line L"は左に、"Line R"は右に振ってやる必要があります。
僕のやり方でもステレオ感は確かに狭まるのですが、意図せず左右が逆転してしまいますので、次の曲からはこのフロー図のように操作してみようと思います。

次回予告

何か今回はイマイチTIPS感の薄い内容になってしまいました。
次回は、オーケストラ音源を制御するMIDIシーケンスの組み方に焦点を当てた記事を書いてみようと思います。
第1稿と第2稿は「望郷の川辺」を作例として使用しました。次の稿では、ボーカルの方からOKが貰えれば「雨上がりのファンタジア」を使ってみたいと思います。

雨上がりのファンタジア(Vocal:maneko Lyrics:月村紗綺「空想四季」より)
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プロフィール

一譲 計

Author:一譲 計
FL使いのDTMer。テンションが上がると音圧が下がります。
空想的・幻想的なモチーフが好き。オーケストラを多用します。
デジタルお絵描き初心者です。2015年の暮れから練習を始めました。
楽曲はWebサイトからご案内しております。

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