記事一覧

MIXとマスタリング

プロの現場ではそんな事ないのだろうけど、一般の間では混同して使われる事が多い。
本で勉強したり、実際に作業をした実感としては、やはり両者は全く別のものだと思う。

MIXは、感覚的に言うと、閉じたモニタリング環境内で楽曲を構成する要素の整合を取って、帯域や定位などを作り込む作業。
パート毎の音量調整は勿論、聴かせる音の優先順位を決めて音の前後関係を入れ替えたり、場合によっては複数のトラックをまとめたステムを作って、トラックグループ間で帯域の譲り合いをしたり。作業内容はとても複雑で、奥深い。
自分の場合、一度素組みをしてからMIXを詰めるけど、感覚としては素組みで4割、MIXで4割、マスタリング2割といった感じ。
まだまだ修行中。

マスタリングというのは主に作業目的が2つある。

一つはMIXを固定した2MIXを、色々な再生環境に対応させるという目的。
よく話題に上がる「音圧調整」もこの一環で、ユーザが使う再生機器に過剰な増幅をさせる事無く楽曲を聴かせる事が出来るようにする、というのが主目的。
また、一般的な再生機器はモニタリング環境と違って、アンプやスピーカ/ヘッドホン特有の味付けがされている事が多い。
例えば俺が通勤に使っているイヤフォンは中域がやや抑え気味のドンシャリ仕様だし、その前使っていたイヤフォンは低域にかなり寄ったクセがあった。
PCのアクティブスピーカは低音が出ないし、コンポなんかは中域が強かったりする。
こうした様々な再生機器がある中で、どんな環境で聴いてもそれなりに楽曲の良さが伝わるようにするのが、マスタリングの第一目的。
俺の場合は、イヤフォン2種類とMDコンポでしかテストしてないけど、プロの現場ではラジカセや業務用のモノラルスピーカまで、幅広い環境に対応するように作るそうだ。すげー。

もう一つは複数の楽曲をセットにして聴いてもらおうとする時に、楽曲間の音量や間隔を適切に調整して、聴き手がストレス無く楽曲のセットを楽しめるようにするという目的。

何でこんな事を急に書いたかと言うと、最近投稿動画のコメントなんかでMIXに関するものをチラホラ見るから。
だいたいそうしたコメントは中途半端で、何が悪いと思うのかが書いていない。

MIXは、正解が無い。技術のようでいて、表現の一部。
普遍的に近づけるべき目標があって、それに対する到達度で品質の良し悪しを測れるようなモンじゃないから、単に「頑張れ」とか「悪い」とか言われたって、何が言いたいのか全く不明。

例えば同じ楽曲でも、コンサートホールでのライブ感を演出したいのか、スタジオでのレコーディング感を演出したいのかで、アプローチは変わる。
前者なら、音源までの距離感を出すために、定位はやや絞り気味にして高域を劣化させつつ、反響音(リバーブ)を強めに出すようにするのではないかと思うし、後者ならリバーブはやや抑え気味にして、定位も広げながら個々の音の輪郭をハッキリさせ、高域まで仔細に聴かせるような取り組み方をすると思う。
歌モノでも、楽曲におけるボーカルの位置づけによって、MIXは変わる。
インストと同列に扱って音源の一部とするならば、インストに埋れさせるようなのもアリだし、歌い手のキャラクタを前面に出したければ、インスト側の帯域を少し譲って、ボーカルを立てるような事も検討するだろうと思う。
要は、作り手が何を表現したいかによって、オペの方向性がガラリと変わるという事。

あれは、難しい。プロでもそう言う。
責めて、「どこが不満だったか」は書いた方が良い。そこまでで「感想」。
どういうオペを加えたら良いと思うかまで書いてあればモアベターで、「アドバイス」。これでもまだ感想の域を出ないけど。

因みに、ちゃんとアドバイスをしようと思ったら結構な分量になる。つまり、エネルギーが要る。
俺が音楽的にリスペクトしてる友達にレビューを頼むと、だいたいA4用紙1枚分くらいの返答が来る。
何を改善したら良いと思うか、その根拠、方法論、選択肢、機材の更新提案、etc…。
非常に有難い!!

レビューの前、彼は「リファレンス曲は何か?」と聞いて来る。
「リファレンス曲」というのは、MIXの仕上がり目標を設定する為の既成曲のことで、正解の無いMIXという作業に正解を規定する為のもの。
低域はどの程度出すのが良いのか、高域はどの程度ブレンドしたら良いのか、ボーカルは出過ぎていないか等をリファレンスと照らし合わせながら調整していく。

詰まるところ、彼はレビューの前に「どんな音を作りたいのか」を確認してくれているって事で。
この認識合わせがあって初めて、アドバイスは「俺が出したい音を出す為に、どういうオペを加えたら良いと思うか」という、自分にとって有益なものになる。
コレが無いと、折角レビューして貰っても仕上がりの方向が違ったり、自分の望まないアドバイスを貰う恐れがある。
つまり、意味の無いアドバイスになる可能性がある。

さすがに見ず知らずの人に毎回そこまでやる必要は無いけど、こうした理由で単に「MIXが悪い」とか「惜しい」とかいうコメントは、貰う方にとって何ら益が無く、またコメント自体の存在意義も無い。と思う。

アマチュアが熱い投稿楽曲。楽しみ方、関わり方は、もっと他にあるのでは?と思う。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

一譲 計

Author:一譲 計

空想的・幻想的なモチーフが好き。オーケストラを多用します。
デジタルお絵描き初心者です。2015年の暮れから練習を始めました。
楽曲はWebサイトからご案内しております。

banner
banner