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調声あれこれ

昨日「送り火の蛍」という楽曲の調声作業が完了しました。
調声、色々な人が色々な方針でされていて、聴く人によって良いとか悪いとか評価も様々別れる所なんですが、俺がどんなモノを是としてやってるかって話を、今日は書いてみようと思います。

俺が調声に求めているのは、ニュアンスが載っているってことです。特に感情の起伏とか、歌のスジに沿った抑揚、歌い方として自然な溜め、こぶし、しゃくりなどは、それなりに意識して作り込んでいる部分。
歌っているのはシンセなので、多少機械っぽい声になるというのは個性として許容します。
声質は、なるべくノーマルなボカロの印象を損なわないような方針で作り込んでいます。
シンセはシンセなんですが、MIXする時は市販の歌モノのCDをリファレンスに使うので、楽曲内でのボカロの扱いは、普通のボーカルと同じ位置づけです。つまり、ボーカルとして必要十分な声量を求めてます。
これらを満たした調声で、オケとMIXした時にキチンとボーカル曲として成立していれば、良い調声と判断します。

ハッキリ言って、ボカロはシンセとして相当なキワモノです。
最初エディタから書き出したばかりの原音は、とてもじゃないけどそのまま使えるような代物じゃないです。
音量も足りないし、声も篭っていてダサいし、ヘンテコな抑揚が付いてるし、妙な帯域にノイズが載っていたりします。

これをオケに載せられるようにする為、まずは何も考えずに音量を150%アップさせます。

その後、コンプレッサかけてペシャンコにします。この「ペシャンコ」というのは、ボカロシンセ都合の音量の揺らぎを取るということです。音量を均一にするのは、自分の手で描いた音量制御曲線がキチンと効くようにするという狙いがあります。因みに、音量制御のためのエンベロープは、ペンタブを使って描きます。
コンプレッサかけると、音量が均一になる代わりにピークレベルは落ちるので、コンプレッサのポストゲインで再度音量を上げてやります。

その後、コーラスを10%くらいかけて少し倍音や芯からズレた帯域を作ります。

次に、イコライザーにかけて声のキャラクターを決定します。
感覚的に、俺の好きなボーカルというのは大体2kHz~3kHzの辺りが充実している傾向があるので、その辺りを中心にバランスを調整します。
ルカの場合、ココがやや貧弱で250Hz~500Hzが充実している傾向があるようです。ここはオケとかぶりやすい帯域なんですが、一律削ってしまうと薄い声になり、キャラクター性が失われてしまうので、あまり削らずにMIXの段階で不要な部分だけをカンナがけをするような感じで削ります。
そうしないと、声が細いと感じた時、一度削った帯域を再度アップする必要が生じるからです。

その後更に、ここまでのオペで「ツ」とか「サ」とかが相当程度耳障りになるコトが多いので、ディエッサを使って音のカドを取ります。
ルカの場合、ディエッサは8kHz~10kHz辺りをターゲットにかけるコトが多いですが、初手の段階からあまり抑えすぎると、またぞろ発音が聞き取りにくくなるので、あまり削り過ぎないように。
この辺りも、最終的なMIXの段階でリファレンスと聴き比べながらどの程度残すのかを決めます。

あとは、MIXの一環で作業をすることが多いです。
コレの考え方は、ボーカルとして求める音量までレベルを上げて、その上で出過ぎている帯域を削り、足りない帯域を足すという、ただそれだけのものです。
勿論、周りのオケからボーカルを立てる為の細工を色々した後の話。

これに加えて、どうしても発音が不明瞭だったり、母音が舌を巻いたような感じになって聴きにくい所を、もっとクリアなサンプルと差し替えをします。
差し替える時は、マスターサンプルをレベル100、差し替えサンプルをレベル0で同期させておいて、差し替えたい部分だけ数百ミリ秒だけクロスフェードさせて差し替えを行います。
差し替えの元先では施されてきたオペの履歴が異なるので、あまり長い時間差替えをしようとすると、耳で聴いて声質の違いが分かってしまいます。なのでこの方法が使えるのはせいぜい1秒かそこらが限度。
場合によりけりで、部分的に一つ前のオペ時点の音と差し替えたいような場合には、多少長くても使えるんですが。
でもそういう時は、1つ前の音に戻ってもう一度オペの設定を見直した方が、統一感のある音が作れる場合が多いです。

他、同じようにピンポイントでイコライザーを当てて瞬間的なコモりを取ったり、カ行、タ行などディエッサで取れないリップノイズをミリ秒単位のボリューム制御で取ったりします。

そんなこんなで、上述のようなオペを基本として、あとは求める音に応じて+αβγ…色々な手を尽くします。
十分な音量を稼ぎつつ耳に優しい声を目指して、調声作業をしてますです。

調声作業というのは肉声を扱う上でもある程度必要になる作業ですが、ボカロのそれはまた特殊で、サンプルが元々持っていない帯域を手で作り出さなければならず、そこが毎回面倒な所です。
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プロフィール

一譲 計

Author:一譲 計
FL使いのDTMer。テンションが上がると音圧が下がります。
空想的・幻想的なモチーフが好き。オーケストラを多用します。
デジタルお絵描き初心者です。2015年の暮れから練習を始めました。
楽曲はWebサイトからご案内しております。

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